金子 敏春

Toshiharu Kaneko

金子敏春氏は、建築家・デザイナーであり、「チーズアート」の第一人者として知られている。東京の下町で鞄縫製職人の三代目として育ち、物作りの環境の中で培った感性と技術を基盤に、建築と食文化のデザインに貢献している。 金子氏が食の道に進むきっかけは、建築士として空間設計を手掛ける中で「文化」を創り出すことへの強い関心を持ち続けたことにある。2007年には鎌倉文学館展示計画でグッドデザイン賞を受賞し、以降は公共施設やホテル、スポーツクラブなどの建築デザインに携わる一方で、チーズアートという新しい食文化のデザインを手掛けるようになった。2015年には日本チーズアートフロマジェ協会を設立し、チーズの芸術性を追求し続けている。 金子氏が大切にしている哲学は、「文化は人間の本質的な願いに応えるものであり、後世に伝える価値があるものでなければならない」というものである。彼のデザインする空間やプロダクトは、ただ機能的であるだけでなく、そこに存在すること自体が喜びを感じさせるものでありたいと考えている。この想いは、彼がデザインした医院のほとんどが地域でトップの売上を記録しているという実績にも反映されている。 特にチーズアートにおいては、金子氏は世界で初めて「アートの力でチーズの魅力を伝える技法」を取り入れ、2013年の世界最優秀フロマジェコンクールで日本代表の村瀬美幸を優勝に導いた。また、スイスチーズアワードの最高審査員を務めるなど、国際的なチーズ競技でもその理論と実績が評価されている。金子氏のチーズアートは、イギリスの「GOOD CHEESE」やフランスの「FRANCE SO CHEESE」などのメディアでも取り上げられ、アートの力でチーズを魅了する存在として広く認知されている。 金子氏は、これまでに3,000人以上のフロマジェを育成し、日本独自のチーズサービス文化の普及にも尽力している。フランス大使館やホテル、レストランでのチーズビュッフェサービスも展開し、国内外で高い評価を得ている。今後も「100年先まで届く文化」を創り出すことを目指し、次世代のフロマジェや空間デザインを通じて、豊かな食文化を支えていく。